16 8月 ボブ・マーリー ソングズデイ
ボブ・マーリー・ソングズデイ、通称「ボブソン」は葉山森戸海岸の海の家「オアシス」が主催する夏の浜辺のイベントだ。毎年8月終わりの日曜日に開催される。始まったのが1994年。中止を余儀なくされた年もあったので、今年2026年はほぼ30回目ということになる。毎年出場者を募り、集まった3~40人の出場者が生バンドをバックにボブの歌を歌って競い合う。審査を経て優勝者が選ばれる。優勝者には賞品としてジャマイカ往復航空券が授与される。会場のオアシスには2~300人の観客がひしめき、熱気が渦巻く。僕もこのイベントに毎年参加している。毎年どころか、初回からほぼ欠かさず出場している。優勝経験もある。あるどころか2度も優勝している。だけど2度ともジャマイカには行っていない。そう言うと誰もが「エエ〜ッ!」と驚く。もったいな〜い。確かにその通りだけど、別にジャマイカが目的で出場しているわけではないのだ。ステージに立って、観客を前にしてボブ・マーリーを歌う。それだけで十分満足なのです。
参加するに際して、ここ10年ほどはボブの歌詞を日本語に訳して歌っている。ボブが何を歌っているのか、英語の歌詞だから、大方ぼんやりとした理解にとどまっているだろう。それをズバリと日本語にして歌ったら、しっかり伝わるんじゃないかと。なので、なるべく元の歌詞に即して訳して、それを曲のリズムとメロディーに乗せて歌う。けっこう高度なテクニックだと、密かに自負しているのだが。
ソングデイ本番はもちろん大きなイベントだけど、実は僕にとってはそれと同等の、もしかしたらそれ以上の価値を持つタスクがボブソンにはある。あまり公にできないが、と言うのも、アンフェアだとの誹りを招きかねないからだが、バックで演奏するバンドのリハーサルに歌い手として僕は加わっているのだ。リハをやるにも楽器だけでやるより、歌が入ったほうがずっとやりやすくなる。そこで歌を担当しないかと声がかかる。ボブ・マーリーの曲をあらかた歌える僕は使い勝手がいいのだ。こうして、スタジオでバンドをバックに、エントリー曲のすべてを立て続けに歌う。2~30曲、声の限りに。まるでボブ・マーリーになった気分。僥倖だ。これはやめられない。無上の喜びをもたらしてくれる。とは言え、リハはあくまでバンドのためだ。バンドに迷惑をかけないためにも、ちゃんと歌いこなせるように練習は欠かせない。そんなわけで、毎年、8月も半ばに入ると頭の中はボブ・マーレイ一色となる。
もっとも、リハ参加は他の出場者からすれば、抜け駆けだとクレームをつけたくもなるだろう。でもいまさら隠すには及ばない。賞を狙っているわけでもないし、ただ楽しいボブソンであって欲しいと願っているだけだ。許してもらおう。それになんと言っても僕はこのボブソンの発案者の一人なのだ。その辺の事情を綴った文章がある。オアシスの代表者マーシーに要請されて書いた、オアシスの歴史の一コマだ。紹介しよう。