Biography

「人生とは、自らの物語を生きること」

「人は物語ることによって自己を理解し、人生を意味づける」

物語とは何か。河合隼雄氏は著作の中で繰り返しこのように語っている。

人は物語なしに生の意味をつかむことはできない。

物語ることは「生きる意味を問う」行為そのものであり、人は物語ることによって、生の意味を明らかにしていく。あるいは、物語ることによって、生そのものを創り出していく。私の創作も、そのような視点に基づいている。

私は自らの人生を通して一つの物語を創造しようとしてきた。言い換えれば、人生そのものを物語へ転化しようと試みてきた。

ただし、語ろうとするのは「私の人生」ではない。「物語」の方である。自分の人生はあくまで一つの素材に過ぎず、私という個を通じて、普遍的な物語に至ろうとしている。実例として自分の人生を取り上げ、「人生は誰にとっても一つの物語である」ということを実証しようとしている。

さらに言うなら、人生は一つの神話である。私は物語を通して、人の生の神秘性、崇高さ、かけがえのなさを、人生の本来の姿を取り戻したいと願っている。

そうした考えのもと、私は実人生に即した物語を紡いできた。

「実体験を物語化(フィクション化)する」という手法は、オートフィクションと呼ばれる。事実と虚構という、相矛盾する要素を融合させる小説技法である。

だが、そもそも人生とは事実と虚構の合作ではないのか?

物語は半生記という形で語られる。

私の人生は前半と後半とに大きく二分されており、前半は経験を蓄積すること、つまり素材作りに、後半はそれらの経験を物語化する作業に費やされてきた。

物語は六つの独立した作品からなる。それぞれが半生のエポックを象徴し、独自のスタイルで語られながらも、互いに繋がり合い、最終的には六部作として、ひと連なりの大きな物語を形作っている。

これらの作品を一作ずつ、このホームページで公開していく予定だ。

読んでくださった方に、何かが届けば幸いである。

1951

東京生まれ

1970

慶應大学法学部入学

1973

世界放浪の旅 2年間に渡りアジア、中近東、ヨーロッパ、アフリカを回る(*1)

慶應大学中途退学

1975

帰国

1976

中南米を旅する(*2

1977

帰国 民芸品輸入業を営む。グアテマラ先住民の手工芸品を扱う

1979

閉業 バリ島、タイ、インド、ネパール、ロンドン、ニューヨークを旅する(*3)帰国 造園業に従事(*4

1981

タイ北部、南インドの旅

1982

民芸品輸入業再開 タイ北部山岳民族の手工芸品を扱う

1987

活動領域をアフリカに移す 西アフリカ諸民族の手工芸品、アンティークを扱う

ローマに転居(*5)

1988

パリに転居 執筆作業開始(*6

1997

『トランス・アフリカン・レターズ』開高健賞奨励賞受賞 TBSブリタニカ社より出版される

2005

日本帰国。執筆生活を進める。

 

*1 この経験をもとに『トランス・アフリカン・レターズ』を執筆

*2 『二人旅』

*3 『奇妙な世界一周旅行』

*4 『修行日誌』

*5 『ある日突然の亡命』

*6 『女と男』